JR東海とJR西日本は、2021年10月1日から東海道・山陽新幹線において、仕事を進めたいお客様のご利用を想定した車両「S work車両」をのぞみ号全列車の7号車に設定しました。
「S work車両」は、パソコンの打鍵音、携帯電話、Webミーティングの通話音等を許容し、ビジネスという同じ目的でご利用になるお客様同士が、気兼ねなく仕事を進めていただくことを想定しております。また、「S work車両」の内N700Sで運行される列車は、高速Wi-Fi環境の提供、ビジネスツールの貸出がございます。このようなビジネスパーソン向け車両は、従来の新幹線・特急列車にはなく、画期的なサービスと言えます。
まだまだ馴染みがない「S work車両」ですが、筆者が実際に乗車した経験をもとに、
・「S work車両」と普通車の違い
・予約方法
・車内の雰囲気
・作業をしてみた感想
・ビジネスツール貸出品の使い心地
・オススメの利用シーン
をお伝えします。
「S work車両」と普通車の違い

通話ができる
S work車両では、携帯電話の通話、オンライン会議での会話が許容されております。これまでは通話の際にはデッキを利用する必要がありましたが、デッキは騒音が大きく、声が聞き取りにくいことが問題でした。さらに、隣席の前を横切ることにも気を使ってしまいます。車内で通話が可能になれば、席に座ったまま効率的に仕事が進められますね。
たしかに、周りの人に通話内容を聞かれると恥ずかしいから、通話は極力控えたいという意見もあろうかと思います。しかし、すぐに済む電話(「あとでかけ直します」「了解しました」など)のために、わざわざデッキに出るのも面倒なことです。長電話になりそうな場合だけデッキに出ることも可能です。Swork車両は突然の電話にもストレスなく対応が可能な点で、利用価値があるのではないでしょうか。
パソコンのキーボード音が許容される
パソコンのキーボードの音等、仕事を進めるうえでの最低限の作業音を許容するよう記載されております。なお、携帯電話、パソコンは他の車両と同じく、音の出ない設定にする必要があります。
歓談、座席の回転ができない
快適な仕事環境を維持するため、歓談、座席の回転は控えるように案内されております。複数人で乗車すれば、つい歓談をしたくなってしまいますが、Swork車両では控えた方がよさそうです。また、お酒禁止とは書いておりませんが、過度な飲酒はやめたほうが良いかと思います。
高速Wi-Fi・ビジネスツールの貸出(N700S限定)
N700S限定ですが、高速Wi-Fi(S Wi-Fi for Biz)への接続、ビジネスツール(膝上クッション、USB充電器、ACアダプタ、簡易衝立、小型マウス)の貸出が可能です。後の章でこれらの使い心地について解説します。
Swork車両の予約方法
Swork車両はEX予約、もしくはスマートEXの限定商品です。EX予約、スマートEXには会員登録が必要となります。
運賃は、Swork車両ではない普通車指定席と変わりませんが、Swork車両の乗車券は新幹線乗車駅から新幹線降車駅までの運賃しか含まれておらず、在来線の乗車券は別となります。つまり、エクスプレス予約のe特急券(乗車券を含まず特急券のみ)は対象外となります。

今回は、EX予約にて京都→名古屋間を予約しました。切符の種類を選ぶ画面にて、Swork車両を選択するのがポイントです。EX予約普通車指定席を選択しても、7号車は満席表示となっていて予約ができません。
参考までに、スマートEXの画面を表示します。(※スマートEXとエクスプレス予約では運賃が異なります)

乗車レポ

乗車列車
乗車日は3月の3連休最終日の昼過ぎ、乗車区間は京都(14:16発)→名古屋(14:50着)の1区間です。
車両は最新型N700Sです。今回乗車したのぞみ376号はN700Sの固定運用ではありませんが、当日朝に「N700S 車いす」と検索し、車いすスペースが6席ある車両(つまりN700S運用)に目星を付けました。
なお、のぞみ号の一部はN700S固定運用となっております。運用を知りたい方は以下の記事で確認してください。
車内の雰囲気
混雑度は、窓側の席は全部埋まり、通路側の席が一部埋まる程度で、他の普通車指定席と比べて少し空いていました。
客層は、男性のひとり客が多く、休日とだけあってスーツを着たビジネスマンはほとんどいませんでした。乗客のうちPC作業をしている人は2割程度、スマホ、読書をしている人が半分程度、残りは何もせず車窓を眺めているか、寝ているといった感じです。仕事をしている人の割合は、他の車両よりは多いものの、休日のためか少数派でした。
京都名古屋間で通話をしている人はいませんでした。歓談する人もおらず、たいへん静かな環境でした。食事をしている人はちらほらと見られましたが、あまり迷惑には感じませんでした。
高速Wi-Fiの使い心地(N700S限定)

東海道新幹線を走行する全ての車両にて無料Wi-Fi(Shinkansen Free Wi-Fi)への接続が可能ですが、N700Sの7号車及び8号車では高速Wi-Fi「S Wi-Fi for Biz」に接続できます。

従来の約2倍の通信容量を備えていると謳われておりますが、実際に使ってみたところ、思ったより速くなく、全車両共通のShinkansen Free Wi-Fiと同じか少し遅いくらいでした。利用者が多かったのが原因か、デバイスの動きが鈍かったことが原因かは分かりませんが、サクサクと動かなかったことは残念なポイントです。
ビジネスツールの使い心地(N700S限定)

簡易衝立
ファスナーが小刻みに動くのが気になります。手元がフワフワして少々不安定なので、長時間使用するのはオススメできません。すぐ隣に人が座っていて、どうしても見られたくないときは使用価値ありです。
小型マウス
接続が面倒で、使い勝手もあまりよくなかったです。基本的にオススメはしません。
膝上クッション
膝上クッションは高さが丁度よく、手元も安定しているため、作業がしやすかったです。サイズが大きめなので、余分なスペースでメモをとることも可能です。
クッションがない場合、PCをひざ元に置くか、机の上にのせて作業することになりますが、ひざ元におくと首が曲がってしまい、机上に置くと机がカタカタ動いてしまって酔い、さらに手を伸ばしておく必要があり疲れてしまいます。膝クッションがあれば、長時間PC作業をしても疲れないだろうと感じました。

オススメの利用シーン

乗車してわかったオススメの利用シーンを5つ紹介します。
・静かな環境で移動したい時
小さなお子様連れやグループ客の歓談が聞こえることがないため、車内はとても静かです。
・ガッツリPC作業をしたい時
言わずもがな、Swork車両は快適な仕事環境を提供することを目的としており、キーボードの打音も許容されているためPC作業にはピッタリです。N700S限定ではありますが、ビジネスツールの貸出、高速Wi-Fiもあります。
・座席に座りながら電話に出たい時
移動中に仕事をする事を目的としていなくても、仕事柄電話対応が必要になる方はいるのではないでしょうか。Swork車両であれば、わざわざデッキに行かなくても車内で電話をとることができます。
・高速Wi-Fiに接続したい時(N700S限定)
YouTubeや映画を高画質でみたいときは、N700S限定ではありますが、通信環境が安定しているS Wi-Fi BIZへ接続することが出来ます。ただし乗車レポの通り、通信速度はそれほど期待できません。
・充電器を忘れた時(N700S限定)
今回の乗車では使用しませんでしたが、N700SのSwork車両では、USB充電器とACアダプタ(TypeC)を借りることが出来ます。充電器を忘れてしまった時に、充電器目当てで利用するのも一つの使い方です。
まとめ
本記事では、Swork車両と普通車の違い、予約方法、乗車レポを紹介しました。今回は、高速Wi-Fiの接続とビジネスツールの貸出が可能なN700S車両に乗車し、その使い心地についても検証しました。今後の利用に役立ててみてください!
車内の雰囲気
・混雑度は他の車両よりも少し空いている程度。
・全員が仕事をしているわけではない。パソコンを使って仕事をしている人は他の車両よりは多いが、Swork車両の中では少数派。
・電話をしている人はいない。
・子連れはいない。
・食事をしている人はいた。
→仕事をするために乗っているというよりは、静かな環境を求めて乗っているように感じた。
貸出品の使い心地
・膝クッションは思いのほか使いやすい。
・小型マウス、簡易衝立はあまりオススメしない。
オススメの利用シーン
・静かに移動したいとき
・PC作業をしたいとき
・座りながら通話したい時
・高速Wi-Fiに接続したい時
・充電器に接続したい時
その他
・購入はスマートEX、エクスプレス予約のみ可能。