【検証】遅すぎる特急伊那路号の存在価値について

特急列車
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特急伊那路について

概要

特急「伊那路」号とは、長野県飯田駅から愛知県豊橋駅までの全長129㎞を最速2時間33分で結ぶ特急列車です。列車はJR東海の373系3両で1日2往復が運行されております。

ほとんどの区間が山間部で線形が悪く、スピードをあまり出せないことから、日本一遅い特急と呼ばれております。

列車の通過駅のなかには、1日あたりの乗降客数が極めて少ない秘境駅が連続していることから、伊那路号が走行する飯田線の区間は「秘境路線」とも言われています。

朝と夕方の2往復が運行されております。飯田~豊橋間の所要時間は、全ての列車で2時間33分です。

  伊那路2号伊那路4号
飯田9:5815:58
天竜峡10:1516:14
温田10:3216:31
平岡10:4216:42
水窪11:0517:05
中部天竜11:2117:19
湯谷温泉11:4917:47
本長篠11:5717:55
新城12:0818:08
豊川12:2118:21
豊橋12:3118:31
  伊那路1号伊那路3号
豊橋10:0815:58
豊川10:1816:14
新城10:3416:31
本長篠10:4516:42
湯谷温泉10:5417:05
中部天竜11:2217:19
水窪11:3517:47
平岡11:5717:55
温田12:0818:08
天竜峡12:2518:21
飯田12:4118:31

【問題提議】特急伊那路号は利便性が悪い

特急伊那路号の長野県側の始発駅である飯田と、3大都市圏である名古屋、東京、名古屋へのアクセスにおいては、特急伊那路号の他、高速バスと自家用車がございます。

特急伊那路号はスピードの遅さ、本数の少なさ、独特な経路ゆえに、高速バスと自家用車と比べて大きく利便性に劣っています。利用者も少なく閑散としていることから、巷では廃止の疑惑もあります。

本記事では、そんな特急伊那路号と高速バス、自家用車との比較、そして意外な利用価値についてご説明いたします。

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特急伊那路号を取り巻く環境

南信地域の交通の特徴について

飯田駅が位置する南信地域(伊那盆地)の交通の特徴として、南北にJR飯田線と中央道が縦断しております。JR飯田線は線形が悪いため高速輸送には向いておらず、飯田駅以北は特急列車や快速列車が運行されておりません。一方で、中央道は南信地域の主要都市からも近くて自家用車の利用が便利なのに加え、高頻度で高速バスが運行されており、南信地域と名古屋、東京を結ぶ交通手段として重宝されています。

参考までに飯田駅から伊那市駅までのアクセスは自家用車で高速道路を使って約45分、使わなくても約1時間かかるのに対して、飯田線各駅停車は1時間半ほどかかります。このように、明らかに自家用車の移動が有利な交通形態となっています。

高速バス・自家用車との比較

特急「伊那路」号のライバルとなるのは、飯田から三大都市圏である名古屋方面・東京方面・大阪方面へ向かう高速バスおよび自家用車です。所要時間、価格について比較を行いました。

飯田↔名古屋

ここでは、飯田から最も近い大都市圏である名古屋へのアクセスを比較します。本数、料金、所要時間全てにおいて高速バスの圧勝です。飯田駅前から名古屋・栄までは高速バスがおよそ約1時間に1本出ています。一方、特急伊那路号を使う場合、豊橋駅で東海道新幹線に乗り換えることになります。また、自家用車は料金はそこそこ高いですが、所要時間において最速であるため、複数人で利用する場合は大きく軍配が上がります。

名古屋→飯田へ向かう高速バスは筆者も乗車したことがあります。名古屋・栄で乗客を乗せた後、半分以上の乗客は飯田IC最寄りのバス停で降車します。地方都市あるあるかもしれませんが、スーパーマーケットや家電量販店などは鉄道駅前よりも高速IC前を中心に分布しており、鉄道よりも高速バスを使って、隣接する格安駐車場から自家用車で帰宅するものと思われます。飯田駅前で降車するのは残りの半分の乗客です。路線バス網、普通列車の本数が多くない飯田では、自家用車と高速バスを組み合わせた利用が定着しているように感じます。

飯田↔東京・新宿

続いて、飯田から東京もしくは新宿までの比較です。特急伊那路号の経路は、豊橋から東海道新幹線ひかり号に乗り継ぎ、東京駅に到着するまでの時間を想定しています。高速バス、自家用車は新宿駅までです。

この区間は距離が長いため、新幹線を乗り継ぐ鉄道経路と、中央道で一直線へ都心へ向かう高速バスの所要時間は拮抗しています。しかし価格と本数においては、高速バスが圧倒的に有利です。

今後、リニア新幹線が開通すれば品川まで40分で結ぶことになるので、東京↔飯田間の輸送形態は大きく変わりそうです。

飯田↔大阪

最後に飯田から大阪までの比較です。実は、高速バスの直行便はないので、飯田から名古屋駅までをバス、名古屋駅から新大阪駅までを新幹線で移動した場合を想定します。名古屋、東京間の比較と異なる点としては、高速バス(+新幹線)が時間的にも料金的に最も有利であるということです。やはり大阪へのアクセスにおいても、特急伊那路号を使う経路は利便性が高くありません。

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利用価値について

沿線利用者の需要あり

特急伊那路号は長野県、静岡県、愛知県の山間の集落を縫うように走行します。沿線人口は少ないとはいえども、学生の通学や車を運転できない高齢者に対しては一定の需要はありそうです。

特急伊那路号では、30kmもしくは50km以内の短区間の利用の場合、お得な特急料金が適用され、通勤、通学などで利用しやすくなっています。特に秘境区間(本長篠駅~天竜峡駅)は普通列車の本数が非常に少なくなるので、特急列車は重宝されます。

観光地へのアクセスがいい

↑天竜峡(引用元:飯田市HP「https://www.city.iida.lg.jp/site/bunkazai/tenryukyou.html」)

特急伊那路号を利用する観光客の多くは豊橋まで東海道新幹線を利用しているものと思われます。東海道新幹線と特急伊那路号を乗り継げば、乗継割引が適用されるのでお得感も増します。

湯谷温泉や天竜峡などの観光地は、それぞれ駅から徒歩圏内にあり、高速バスの定期便もないため、外国人観光客や自動車を運転しない観光客が利用しやすくなっています。実際に筆者が乗車した際には、天竜峡駅、湯谷温泉駅で何人かまとまった乗降が見られました。

旅情がある

飯田線の山間部では、大きな車窓からのどかな景色を楽しむことができます。駅弁を食べながらのんびりと移動する時間は旅の醍醐味とも言えるでしょう。

駅弁屋のホームページ:中部地方 豊橋駅
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まとめ

本記事では、特急伊那路号と高速バス、自家用車との比較、そして乗って分かった意外な利用価値についてご説明いたしました。

先述の通り、飯田から三大都市圏である名古屋、東京、大阪間のアクセスにおいては、特急伊那路号には勝ち目がなく、高速バスもしくは自家用車の利用が圧倒的に有利という結果になりました。

そんな伊那路号ですが、沿線の通勤通学利用や、魅力的な観光地へのアクセス手段として重宝されていることは間違いありません。特急伊那路号が走行する区間では、風光明媚な車窓を見れるので、旅情を楽しむために乗ってみるのもいいかもしれませんね。

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