特急伊那路号とは
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概要
特急「伊那路」号とは、長野県飯田駅から愛知県豊橋駅までの全長129㎞を最速2時間33分で結ぶJR東海の特急列車です。1日に2往復、全列車3両編成で運行されています。
列車は長野県南信の中心都市である飯田から、長野県、愛知県、静岡県の県境付近の山間部を縫うようにグネグネと走行し、東海道新幹線の停車駅豊橋駅までを結びます。
スピードがあまり出せないことから表定速度は50.7km/hにとどまり、日本一遅い特急の異名を誇ります。また、特急列車の走行区間には、利用者がほとんどおらず辿り着くにも一苦労な秘境駅が連続しており、秘境路線を走る特急列車と言われています。
本記事では、そんな特急「伊那路」号の概要、沿線の魅力についてお伝えします。この記事を読めば、特急伊那路号に乗ってみたくなること間違いなしです!
使用車両
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特急伊那路号にはJR東海373系3両編成が使用されています。全車普通車で飯田寄りから1号車~3号車まであります。指定席は1号車と2・3号車の車端部のセミコンパートメントで、それ以外は自由席になっています。
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豊橋よりの先頭車である3号車はモーター車となっており、飯田方面から3号車の自由席に乗車すれば、GTO-VVVFインバーターの走行音を聞きながら、前面展望を楽しむことができます。
特急「ふじかわ」号との比較
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飯田~豊橋を結ぶ特急伊那路号とよく似た特急列車に、同じくJR東海の身延線を走行する特急ふじかわ号が挙げられます。
特急伊那路と特急ふじかわの類似点は、「使用車両が373系」、「渓谷地帯の秘境区間を走行する」、「表定速度が50キロ前後と超遅い」などがあります。特急ふじかわの身延線区間(甲府~富士)に限ると、車窓、速度感などは本当によく似てます。
両者の相違点を挙げるならば、本数です。特急伊那路号は朝晩の2往復のみ、特急ふじかわ号は2時間間隔で7往復あり、特急ふじかわ号の方が輸送量が大きいことが分かります。
乗車記
始発の飯田駅
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特急伊那路1号の始発駅、飯田駅は長野県南信地域の中心都市として古くから栄えています。駅舎は名産のりんごをモチーフにしているんだとか。
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駅から約1kmの場所には、飯田城跡、飯田市美術館、入園料無料の動物園などがあります。
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特急列車に乗車する前夜、筆者は飯田城跡にほど近いホテルに宿泊しましたが、飯田駅前の居酒屋数件を除けばとても閑散としておりました。駅前から飯田城跡にかけてアーケード街がありましたが、昭和時代の面影が強く残っており、とても繫栄しているとは言い難いといった印象でした。
そんな飯田駅ですが、近郊にリニア新幹線の開通とともに長野県駅が設置されます。東京・飯田間を45分、名古屋・飯田間を25分で結ぶことから、東京・名古屋の通勤圏にも余裕で入ってくるので、飯田市を含め南信地域は今後大きく発展していくことでしょう。
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なお、飯田線はアニメとコラボしており、駅構内にはキャラクター等身大?のラッピングがなされています。JR東海では沼津駅でラブライブとコラボするなど、近年アニメとのコラボが盛んです。
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パネルに描かれているキャラクターは、「為栗(してぐり)メロ」といい、飯田線の秘境駅である為栗駅から名をとっています。
特急伊那路2号に乗車
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飯田駅9:58発、特急伊那路2号に乗車です。乗車日は普通の土日休みの土曜日です。座席は、前面展望とモーター音が楽しめる自由席を取りました。
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列車は発車約8分前の9:50頃に到着し、客扱いを開始しました。列車が到着してから約3分後に乗車しましたが、無事自由席の特等席を確保することができました。なお、飯田駅発車時点で、自由席のある3号車は筆者以外に3人乗車しておりました。
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伊那盆地を南進(飯田駅~天竜峡駅)
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列車は飯田駅を力強いVVVF-GTO走行音とともに発車し、JR東海特急お馴染みのワイドビューチャイムが流れ、旅情が搔き立てられます。これから約2時間半の長旅の始まりです。
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列車はきついカーブを曲がりながら伊那盆地を南進していきます。伊那盆地は河岸段丘の地形が特徴的であり、列車は崖に沿うようにアップダウンを繰り返して進みます。特に、飯田駅を出発してから次の切石駅までの間は河川により大きな段丘となっているため、高低差を付けるために、平面的にみるとコの字型に走行します。
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伊那盆地の区間は宅地や農地が分布しており、そこそこ栄えています。
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飯田駅を発車して16分、列車は10:14に天竜峡駅に到着します。天竜峡は天竜川の名勝地です。天竜峡駅のすぐ目の前に位置しており、車を運転しない海外旅行客などにも人気です。夏は天竜川川下りの拠点となっており、アウトドアスポーツが盛んです。温泉街もあり、川の景色を眺めながら温泉に浸かるといった楽しみ方もできます。
天龍峡温泉観光協会 – 名勝天龍峡の川下りや桜・紅葉情報(長野県飯田市) (tenryukyou.com)
長野県秘境区間へ突入(天竜峡駅~中井侍駅)
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天竜峡駅を発車すると、天竜川沿いの険しい渓谷地帯に突入し、切り立った山が目の前にそびえたちます。途中通過駅の為栗駅など、乗車人員が1日数人程度しかいない超秘境駅が連続する区間でもあります。
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途中通過駅の門島駅には、予備の橋梁桁がストックされていました。こんなローカル線でも万が一に備えて予備桁を用意しているのはさすがJR東海様ですね。軌道の状態もかなり良く、どこかの西の会社なら時速110キロくらい出せそうなレベルの軌道です。
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また、乗車列車は長野県南端の中井侍(なかいさむらい)駅に臨時停車しました。中井侍って駅名カッコイイですね。元々はさわやかウォーキングが予定されておりましたが、先日の大雨の影響により開催が中止されたようで、特急伊那路号の臨時停車扱いだけがそのまま残った形になります。当然、だれも乗り降りしません(笑)
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長野県秘境区間の中でも比較的栄えている平岡駅。
静岡県区間
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列車は静岡県に入ってしばらく走ると、これまでグニャグニャの曲線を走行していたにもかかわらず、定規で引っ張ったかのような直線のトンネル区間に入ります。実はこれには佐久間ダムの建設が関係しています。佐久間ダムは日本最大級のダムであり、ダム湖としては上流約13kmにわたります。ダム湖により飯田線の旧線が沈んでしまうため、山を隔てて東側に迂回すべくトンネルが建設されました。ここでは最高速度85キロで走り抜けます。
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列車は水窪(みさくぼ)駅に停車。飯田方面の普通列車と行き違いをします。
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しばらく天竜川の支流である水窪川沿いに走行すると、再度直線の長大トンネルを西側に進み、佐久間ダムのお膝元、中部天竜駅に到着します。
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中部天竜駅到着前には、佐久間ダムの直下にある佐久間水力発電所が見えます。水力発電所としては、国内有数の発電電力量を誇るもので、設備もかなり大きい部類です。
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さて、中部天竜を発車すると、静岡県~愛知県県境に向けて山を登っていきます。これまでは、天竜川を下るように走ってきましたが、ここで流れの向きが変わります。
愛知県区間へ突入
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愛知県区間に突入後しばらくすれば、景勝地である鳳来峡が見えます。鳳来峡にはJR飯田線と並行するように板敷川が流れており、川底に板を敷き詰めたように見えることからこう呼ばれるようになったそうです。鳳来峡と隣接するように湯谷温泉という、そこそこ大きな温泉街があり、湯谷温泉の中心部に特急伊那路号が停車する「湯谷温泉」駅があります。鳳来峡で目の保養や川遊びをした後にゆっくりと温泉を楽しむことができます。
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長篠城駅付近では「長篠城跡」が見えます。長篠城は戦国時代は1575年の長篠の戦いに先立つ攻防戦で知られています。今は城跡しかありませんが、歴史を感じることができます。
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特急伊那路1号最後の停車駅は豊川稲荷で知られる豊川駅です。豊川稲荷は日本三大稲荷の一つに数えられ、商売繫盛のご利益で全国的に知られています。豊川駅から趣のある参道が続いており、徒歩約5分でたどり着けます。
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終点豊橋駅
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豊橋は愛知県東部の中心都市です。正直、これといった観光地はありませんが、交通の要衝となっており、人口も多く栄えています。豊橋駅には東海道新幹線のこだま号と一部のひかり号が停車することから、名古屋方面、静岡・東京方面へのアクセスが容易です。
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感想
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本記事では、日本一遅い特急「伊那路」号の乗車記、沿線の魅力についてお伝えしました。遅いながらも、伊那盆地、渓谷地帯ののびのびとした風景を楽しむことができ、飽きることのない2時間半でした。都会の喧騒を忘れたくなったら、是非とも特急伊那路号に乗ってみるべきです!