特急ふじかわとは
特急「ふじかわ」とは、静岡駅と甲府駅を結ぶJR東海の特急列車です。静岡駅から富士駅までは東海道本線を、富士駅から甲府駅までは身延線を走行します。列車の本数はおよそ2時間に1本、一日に7往復が設定されており、静岡~甲府間を2時間20分で結びます。
列車はJR東海373系3両で運用されています。全て普通車でグリーン車の設定はありません。373系は特急「ふじかわ」の他、飯田線豊橋~飯田駅間を結ぶ特急「伊那路」や静岡地区のホームライナーとして運用されています。似て非なる特急列車として、名古屋~長野を結ぶ特急「しなの」が挙げられますが、こちらはカーブを高速で通過できる振り子機能を搭載した383系で運用されています。
とにかく遅い
身延線区間でみれば日本一遅い特急
特急ふじかわの表定速度は、最速列車でも静岡~甲府間で時速54.6キロ(122㎞、約2時間20分)です。ただし、静岡~富士駅間は東海道本線を最高速度110キロで走行するため、平均値を押し上げています。身延線区間(富士駅~甲府駅間)に限ると時速48キロ(88㎞、約1時間50分)であり、これは飯田線(飯田駅~豊橋駅)を走行する特急「伊那路」の時速50.7キロを差し置いて日本一遅い特急列車となります。参考までに、特急「しなの」の名古屋長野間の表定速度は時速83キロであることからも、特急「ふじかわ」の遅さが際立っていることがわかるかと思います。
カーブの多い線形
身延線の区間は甲府盆地を抜けると富士川に沿うように山間部を走行します。山間部の集落を縫うような経路になっているため、曲線と短いトンネルが続きます。身延線区間の最高速度は時速85キロですが、最高速度で走行する区間はほとんどなく、カーブで時速30~50キロの制限を受けながらダラダラと走行しているのが特徴です。
遠回りの経路
列車は、甲府から静岡まで富士を迂回するように走行します。身延線と並行する形で中部横断自動車道があり、甲府静岡間をほぼ1直線で結んでいるのに対して、特急ふじかわは大回りするように富士駅を経由しているため、距離が長くなっています。
自家用車・高速バスとの比較
静岡甲府間の都市間輸送手段として、鉄道、自家用車、高速バスがありますが、特急ふじかわは所要時間、料金面で大敗しています。山梨県内から静岡市内までの自動車によるアクセス性は、2021年の中部横断自動車道全通により飛躍的に向上しました。参考までに、甲府駅から静岡駅までの所要時間は、自動車で1時間40分足らず、特急「ふじかわ」で約2時間20分であり、約40分もの大差をつけています。
また、料金面で比較しても高速道路料金が平日2,160円、休日1,510円+燃料代約1,000円(106㎞)であることを考慮しても、特急「ふじかわ」の自由席利用料金4,700円と比較して片道1,000円以上の差がついています。
さらに追い打ちをかけるように、2021年の中部横断自動車道の全通のタイミングで静岡甲府間で高速バスの運行が開始されました。こちらは土休日のみ、朝と夕方の2往復のみの運行ですが、所要時間は約2時間、料金は2600円と完膚なきまでに特急「ふじかわ」を圧倒しています。また、通信環境も高速バスでは途切れることはありませんが、特急「ふじかわ」は山間部のトンネル区間で頻繫に圏外になってしまいます。
利用価値はあるのか?
特急ふじかわについて、ここまで「遅くて」「高い」と酷評しましたが、実はいい所も何点かあります。
区間利用が便利
特急ふじかわは、甲府静岡間の長距離移動には不向きかもしれませんが、途中停車駅同士の区間利用が便利であり、これが一番の存在意義といっても過言ではありません。例えば、甲府都市圏の利用、東海道線区間(静岡~富士駅間)、本数が極端に少なくなる山間部区間(鰍沢口~富士宮)においては、並行するバス路線も少なく、スピード面でも自動車(下道利用)よりも優位になります。
加えて、身延線区間では短区間の利用がしやすい価格設定がされています。特定特急料金と言い、自由席特急料金が25キロまで330円、50キロまで660円となっています。沿線の通勤、通学などでも利用しやすい価格となっています。
公共交通機関としては有用
静岡甲府間を結ぶ公共交通機関として、特急ふじかわが一日7往復、高速バスが土休日限定で一日2往復ありますが、本数の多さに関しては特急ふじかわに大きく軍配が上がります。特急ふじかわは、甲府始発6:20、終電18:36、静岡発始発8:17、終電19:45であり、その間2時間に1本運転されています。高速バスは速達性、価格面で優れるものの、利便性では特急ふじかわの方が優位になります。
新幹線との乗継割引がある
東海道新幹線を静岡駅で乗り継ぐことにより、特急ふじかわの特急料金が半額になります。甲府~静岡駅間の場合、自由席特急券1,860円→930円、指定席特急券(通常期)2,390円→1,190円になります。身延線沿線から浜松、名古屋、大阪方面へ向かう時に有用です。
旅情がある
特急ふじかわの車窓からは、富士山や富士川沿いの切り立った山地など、風光明媚な景色を楽しむことができます。
列車はくねくね曲がった線形を加減速を繰り返しながら走ります。とてものんびりしています。
甲府近郊はしばらく平野が広がります。
市川大門駅の駅舎は趣がありますね。
まとめ
本記事では、特急ふじかわが遅い理由、そして意外な利用価値についてご紹介しました。甲府~静岡間の相互利用は少ないものの、区間利用や自家用車を持たない沿線民には重宝されています。
また沿線民に限らず、のんびりとした鉄道旅を楽しみたい方にもうってつけです!是非、乗車してみてはいかがでしょうか。
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