グリーン車導入で変わること

2025年3月15日から、JR東日本の中央線・青梅線の全ての普通・快速列車(以下、特急列車および総武緩行線と区別するため、「快速列車」と呼ぶ)に グリーン車 が導入されます。これまでE233系の10両編成で運行されてきましたが、今後は 全ての快速列車の4号車・5号車にグリーン車を組み込み、12両編成で運行 されることになります。これにより、通勤や長距離移動の快適性向上、そして混雑緩和が期待されています。
一方で、通勤時間帯に設定されていた 特急「はちおうじ」「おうめ」の廃止、それに伴う 快速列車の混雑、 座席確保が難しくなる可能性 など、懸念の声もあります。本記事では、中央線のグリーン車導入がもたらす メリット・デメリット を整理し、総合的にどのような影響があるのかを詳しく検証します。
グリーン車導入のメリット
快適な移動環境

リクライニング座席
グリーン車の座席は、一般車両とは異なり 進行方向を向いたリクライニングシート になっています。長時間の移動でも快適に過ごすことができ、仕事や読書、仮眠をとる際にも便利 です。
Wi-Fi・コンセント完備
今の時代に欠かせない Wi-Fiとコンセントが完備 されているのは大きなポイントです。これは、東海道線などのグリーン車にはない設備であり、PC作業やデータ使用量の大きい動画を楽しむ際にも便利 です。

静かで落ち着いた車内
グリーン車は 扉の数が少ないため、人の出入りが少なく、騒音が抑えられる 特徴があります。また、利用者の客層が比較的落ち着いているため、快適に過ごせる空間が確保されている ことも魅力の一つです。
車内販売サービス
グリーン車では、アテンダントによる飲み物や軽食の販売サービスも提供されます。近年、東海道新幹線ですら普通車の車内販売が廃止される中、このようなサービスが残るのは嬉しいポイントです。
↓特急あずさ・かいじ号グリーン車の解説記事はこちら
有料座席の着席チャンスが大幅に増加

圧倒的な運行本数
これまで、有料座席を利用するには数少ない特急列車を 事前に予約 するしか選択肢がありませんでした。しかし、中央線快速は 始発から終電まで高頻度で運行 しており、通勤時間帯は 2〜3分間隔 で運転されています。これにより、グリーン車の着席チャンスが大幅に増えます。
特急が停車しない駅からの着席機会の増加
グリーン車の導入によって最も恩恵を受けるのは、特急が停車しない駅の利用者 です。これまでは、有料座席を利用するには 特急停車駅まで移動し、乗り換える必要 がありました。しかし、グリーン車の導入により、最寄り駅から目的地まで、有料座席でゆったりと移動できる ようになります。
ラッシュ時の混雑緩和
依然として高い混雑率
中央線快速のラッシュ時の混雑率は依然として高く、2022年の調査によると、最混雑区間の乗車率(中野→新宿 7:35~8:35)は158% に達しています。これは東京都心部の通勤路線の中でも ワースト6位 に入る水準であり、コロナ禍が収束した後も高い混雑が続いていることがわかります。
グリーン車利用者の増加で混雑緩和
グリーン車の定員は 1編成あたり180名 です。座席を確保したい層がグリーン車を選択することで、普通車の混雑が軽減される効果 が期待されます。
予約不要で気軽に利用可能

自由席のメリット
快速列車グリーン車は 指定席ではなく、来た電車に乗って空席に座るスタイル です。そのため、特急列車のように 事前にチケットを購入する手間が不要 で、思い立った時に気軽に利用できます。
座席の移動も自由
さらに、途中駅で 窓側席が空いたら移動できる のも、グリーン車ならではのメリットです。指定席では隣に座る人を選べませんが、自由席なら状況に応じて座席を変えることができるため、より快適に過ごせる でしょう。
デメリット
朝の通勤特急「はちおうじ」「おうめ」の廃止

合計9本の特急列車が廃止
2025年3月のダイヤ改正により、中央線・青梅線の通勤特急「はちおうじ」「おうめ」が全廃されます。これまで、通勤時間帯の速達列車として、E353系を使用した「はちおうじ」(東京〜八王子)と「おうめ」(東京〜青梅)が運行 されていました。「はちおうじ」は 朝(上り)2本・夜(下り)4本、「おうめ」は 朝(上り)1本・夜(下り)2本 が設定されていましたが、今回の改正ですべて廃止されます。
着席保証がなくなる
これまでの特急は 全車指定席 で、チケットを購入すれば確実に座れる 仕組みでした。一方で、グリーン車は 自由席のため、ラッシュ時の途中駅からの利用では座席が確保できない可能性 があります。
設備の簡素化
特急列車の普通車指定席と比較すると、グリーン車の設備は 簡素化されている 点が挙げられます。


- 二階建て構造のため天井が低い
- 荷物棚がないため、大きな荷物の持ち込みが不便
- 特急の座席にはある可動式枕がグリーン車にはない
- トイレが狭く、最低限の設備のみ
料金の割高感
特急よりも高くなるケースがある
快速列車グリーン車の料金設定は、特急列車の普通車指定席よりも高額になるケースがある という点が気になります。
乗車キロ数 | 区間例 | 快速グリーン料金(Suica) | 特急列車チケットレス | 差額 |
~50km | 東京~八王子 新宿~高尾 新宿~青梅 | ¥750 | ¥660 | ¥90 |
51~100km | 東京~高尾 東京~青梅 新宿~大月 | ¥1,000 | ¥920 | ¥80 |
例えば、東京〜八王子駅間(~50km)の場合、特急列車のチケットレス特急券が660円、快速列車グリーン車料金が750円であることから、快速グリーン車の方が90円高いという価格設定になっております。
特急列車の方が速達性があり、設備も整っているにもかかわらず、グリーン車の方が高額になる場合がある のは意外に感じるかもしれません。特急列車は、「安い・速い・確実に座れる」の三拍子が揃っていました。しかし、快速列車グリーン車にはこの全てが当てはまるわけではなく、利用者によっては「特急の方が良かった」と感じる可能性 があります。
デメリットを上回るメリットもある

通勤特急廃止でも座席提供数は大幅増
快速列車グリーン車の導入によって 特急列車の廃止があるものの、全体的な座席提供数は増加 します。具体的に、朝・夕のラッシュ時にどの程度の変化があるのか を比較してみましょう。
時間帯 | 快速グリーン車の座席数 | 通勤特急(はちおうじ・おうめ)の座席数 | 座席数の純増 |
朝ラッシュ(東京方面) 新宿駅 7時~8時59分着 | 48本 × 180席 = 8,640席増加 | 2本 × 674席 = 1,348席減少 | 7,292席の増加 |
夕ラッシュ(八王子・青梅方面) 新宿駅 18時~22時59分発 | 65本 × 180席 = 11,700席増加 | 6本 × 674席 = 4,044席減少 | 7,656席の増加 |
夕ラッシュ(八王子・青梅方面) 新宿駅 18時~18時59分発 | 14本 × 180席 = 2,520席増加 | 2本 × 674席 = 1,348席減少 | 1,172席の増加 |
このように、特急列車が減便されたにもかかわらず、快速列車グリーン車の増結によって座席数はトータルで増加 しています。「着席機会の拡大」という観点では、特急廃止のデメリットを上回る効果 が期待できそうです。
このように、特急列車が減便されたにもかかわらず、快速列車グリーン車の増結によって座席数はトータルで増加 しています。
「着席機会の拡大」という観点では、特急廃止のデメリットを上回る効果 が期待できそうです。
特急が止まらない駅の利用者には大きくプラス

中央線の特急列車は 停車駅が限られているため、特急を利用できる人は一部に限られていました。そのため、特急が止まらない駅の利用者にとっては、これまで有料座席の選択肢がなかった という背景があります。しかし、快速列車グリーン車の導入によって「最寄り駅から乗車し、そのまま目的地まで座って移動できる」 というメリットが生まれました。特に 立川~新宿間の各駅の利用者 にとっては、特急列車という選択肢がそもそもなかったため、グリーン車が新たな快適な移動手段となります。
また、東京都心部だけでなく、高尾や大月、青梅方面への観光利用者にとっても、乗り換えなしで快適に移動できるのは大きな利点 と言えるでしょう。
最も混雑する朝ラッシュピーク時にはもともと特急列車はない
中央線の朝ラッシュ時は依然として混雑率が高いものの、実は最も混雑するピーク時間帯(新宿駅8時前後着)には、もともと特急列車が運行されていません。
今回廃止される通勤特急は 立川駅を6時台に発車する3本のみ であり、これがなくなったとしても、ピーク時の通勤環境に大きな変化はありません。
むしろ、グリーン車の増設によって着席チャンスが増えることを考えれば、混雑緩和の効果が期待できる でしょう。
グリーン車を有効活用する方法
ワークスペースとしての活用

グリーン車は、快適な移動空間を活かしてワークスペースとして活用することも可能 です。
例えば、立川から東京駅までの約56分間のうち、40分をPC作業に充てることができます。仮に 時給1,500円とすると、40分の作業で約1,000円の価値 が生まれる計算になります。一方で、グリーン料金は 750円。作業によって得られる価値がグリーン料金を上回る可能性がある ため、満員電車のストレスを回避しながら、料金以上の価値を生み出すことができるでしょう。
快適な移動で体力・集中力を温存

満員電車での通勤は、体力を消耗し、仕事のパフォーマンスにも影響を与えます。しかし グリーン車を利用すれば、移動中に無駄な疲労を抑え、出社後の業務に集中しやすくなります。また、帰宅時にはグリーン車の座席に座り、リラックスした時間を過ごせる ため、QOLを向上させることができるでしょう。
まとめ

中央線快速へのグリーン車導入により、座席の快適性向上や通勤ラッシュ時の混雑緩和、有料座席の利用機会の拡大など、メリットは多岐にわたります。
特に これまで特急が停車しなかった駅の利用者にとっては、新たな快適な移動手段としての選択肢が生まれる ことは大きな利点といえるでしょう。
一方で、通勤特急「はちおうじ」「おうめ」の廃止 や、特急列車と比べた設備の簡素化、料金の割高感 など、懸念点もあります。特急を利用していた通勤者にとっては、着席保証がなくなることや、速達性が損なわれる点 がデメリットとなるかもしれません。しかし、全体的な座席供給数は増加しており、特急廃止の影響をある程度カバーできる可能性があります。
今回の導入によって 中央線の移動環境が大きく変わることは間違いありません!ぜひ中央線を利用する方は魅力的な選択肢としてグリーン車を検討してみてはいかがでしょうか。
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