ビジネスブースの概要
導入の背景
コロナ禍でリモートワークなど場所を選ばずに仕事をする機会が増える中で、JR東海は近年、移動時間も快適に働ける環境の整備に力を入れています。
その中でも革新的なのが、2021年10月より全ての「のぞみ号」の7号車を、仕事を進めたいお客様の利用を想定した「Swork車両」として設定したことで、一部車両においては大容量無料Wi-Fiの提供、ビジネスツールの貸出などのサービスを展開しております。
筆者は、実際に「Swork車両」に乗車しましたが、車内で私語をする乗客はおらず、PC作業を進めるにはいい環境でしたが、オフィスでこなす全ての仕事を進めるにはいくらか制約があるように感じます。

Swork車両の課題 ・テレビ電話を行うことも可能だが、人によっては周りに声が聞こえることに抵抗を感じる。 ・PCや資料の中身を見られたくない。 ・資料を広げたり、メモを取るにはスペースが狭すぎる。
ビジネスブースの導入

そんな中で、Swork車両の導入から半年が経過した2022年5月、オンライン会議などができる個室タイプの「ビジネスブース」を新型車両N700Sの一部編成に試験導入されました。「新幹線ビジネスブース」は、先に述べたSwork車両の課題を解決できるのでしょうか?
筆者は実際にビジネスブースを利用し、使い心地を検証してきました!
この記事を読めば、東海道・山陽新幹線「ビジネスブース」の利用方法、使い勝手がわかり、新幹線の移動時間を有効活用できるようになるでしょう!

利用にあたって
サービス内容


・オンライン会議、PC作業などができる個室の作業スペース ・設置個所は7号車と8号車の間のデッキ部分 ・料金は無料 ・1グループ2人まで ・1回あたり30分利用可能 ・コンセント、無料Wi-Fiあり ・サービス提供区間は東京から博多まで ・2022年5月現在、3編成のみ導入
設置個所は7号車と8号車の間のデッキ部分です。ここは、2021年3月まで喫煙ルームがあったスペースで、既存車両については順次ビジネスブースに改造されていく予定です。
導入編成は、最新型N700Sの3編成(J25~27編成)のみで、まだまだ試験段階となっております。
ビジネスブースを搭載している列車に乗る
ビジネスブースを搭載している列車は、当日朝、JR東海のHPにて確認することができます。(https://railway.jr-central.co.jp/pwd/_pdf/N700S.pdf)
例えば、上の表は6月4日の運用を示しておりますが、「のぞみ207号」がビジネスブース付き車両で運行されることがわかります。
本数は少なく、一日に数往復程度です。ダイヤ乱れが発生するとお目当ての列車に乗れないこともあるので、予めご了承ください。
また、当日以外にビジネスブース搭載車両を確認する術はありませんが、N700Sで運行される列車は一部固定されているので、それを狙えばビジネスブース車両に乗れる確率も高くなります。
7号車を予約する
ビジネスブースは、7号車の指定券を持っている乗客のみ利用できます。予約および利用開始手続きにおいて指定席特急券の提示を求められることはありませんが、これはルールなので守りましょう。
なお、「のぞみ号」の7号車はSwork車両に設定されているため、EX会員のみ予約可能です。券売機で購入しようとしても、満席が表示されるので注意が必要です。ひかり号・こだま号は券売機でも購入可能です。
利用手続きをする
空室の場合

空室の場合はビジネスブースにそのまま入室し、タッチパネルで利用開始手続きをします。
使用中の場合


使用中の場合は、座席前ネットに備え付けのリーフレットのQRコードを読み取り、予約手続きをします。なお、乗車前の予約はできません。
実際に使ってみた
設備

ビジネスブースの外観です。喫煙スペースと同じ場所にあります。ガラスはくもりがかっているので、作業内容が見えることはありません。

ブース内には、真ん中に窓が一つと、机、いす、予約用のタッチパネルが配置されています。窓の下のタッチパネルで予約の操作、残り時間の確認ができます。

イス・机は少し高めです。

イスの高さは調節可能で左右に回転します。発車直後は加速が強いので回転しそうになってしまいましたが、発車後1分程度で気にならなくなりました。
なお、床はカーペット状になっており吸音効果の役割を果しています。

机は前後左右ともにかなりゆとりがあります。写真のPCは13.5インチのsurface Laptopです。PCを置いて資料を広げながらの作業も余裕です。

入退室ともにドア横のボタンを押すと自動ドアが開きます。街中でよく見かけるワークブースとは違ってロックはかかりません。使用時間内であれば自由に出入り可能です。
静粛性
騒音はあるもののオンライン会議をするには十分な静かさです。客室内・デッキよりも声がこもるような感覚です。
通話をするときの声量は、デッキでは声を張らないと伝わりませんが、ワークブース内ではオフィスで話すときの声量でも十分伝わります。

ビジネスブース、座席とデッキで騒音を測定してみました。
たしかに数値上は大差ありませんが、ビジネスブースは人の話し声が全く聞こえず、防音加工もしているので騒音が響かず、かなり静かに感じました。
作業性

作業のしやすさは抜群にいいです。
机がとても広いため、PCと資料を広げながら作業をすることができます。
また、机とイスは高めに配置されておりますが、いい意味で落ち着かずに作業できるため、個人的に気に入っています。
手元が明るくなるよう照明が配置されており、作業のしやすさ、オンライン会議における顔の見やすさにおいても高評価です。
いまいちな点
無料Wi-Fiが遅い
ビジネスブースでは、容量が大きいことがウリの無料Wi-Fiサービス「SWi-Fi for Biz」に接続することができますが、通信状況が悪く、接続までに5分程かかってしまいました。通信速度もスタバなどのカフェよりもはるかに遅く、オンライン会議を行うには十分ではありません。
安定した通信環境を求めるのであれば、デザリング機能またはポケットWi-Fiが必須です。
確実に使えるとは限らない
ビジネスブースは乗車前の予約ができず、各編成に1箇所しかないため、使えるかどうかは運任せもしくは早い者勝ちになります。
確実にビジネスブースを使用できる保証がない状態で、オンライン会議を事前に予定しておくことは、満室だった時のことを考えるとリスクです。もちろん、Swork車内でもオンライン会議はできますが、周囲への迷惑、セキュリティの観点から、ビジネスブースを使うに越したことはありません。
今は試用段階ですが、今後の実用段階で予約機能が備わることを期待しましょう。
まとめ
結論
ビジネスブースの利用が向いているシチュエーション
・オンライン会議 ・資料を広げた作業 ・メモをとる作業 ・資料、画面を他人に見られたくないとき
利用にあたっての注意点
・無料Wi-Fiが遅い。→デザリング、ポケットWi-Fiの活用を推奨 ・予約ができない→事前にオンライン会議を設定するのはオススメできない。
今後の展望

2022年5月に導入されたビジネスブースは、2022年6月現在N700S車両3編成限定の試験段階ですが、いずれは実用化され、他編成へ拡大していくものと思われます。
現在の仕様は、利用料が無料で、乗車前の予約が不可能ですが、実用化されれば有料化、予約が可能になるなどの仕様変更が行われることも考えられます。
また、これから新たに増備されるN700Sに関しては全てビジネスブースが装備されると考えられます。JR東海の発表によると、N700Sを2022年度は13編成増備するとのことなので、2022年度末にビジネスブースを備えた編成は、2021年度の最終増備編成1編成とあわせて14編成が運用につく見込みです。使っていない喫煙スペースが残ったままの既存車両についても、順次ビジネスブースへの改造が進められていくものと思われます。
今後の実用化に期待しましょう!
コメント